マルチクリエイターを目指す【くらのかける】の、だらだら小説修行の場。 目指せ、小説家!
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 夏のごたごたで更新が止まってしまって申し訳ありません。
 PCの不調で、何度も短編を書きかけては消える、を繰り返してしまったため、今回からちまちまと連載をしてみる事にしました。
 もちろん、お題も消化していきます。


 【マグノリア】は、およそ六年前、二十歳になった頃に『コバルトノベル大賞』に投稿した作品です。
 前年に投稿した作品は見事に落ちて、二度目の挑戦となりました。
 当時好きだった学園アクションファンタジー(?)をベタに振舞った作品で、設定も描写も未消化で色々と惜しいまま発表しました。
 結果は当然、没だったわけですが。
 この作品に出てくるキャラクターは私の元祖ともいえる子達で、この間e-bookersで発表した『雨の日の恋人達』もこのシリーズになります。
 いつかプロ作家になれた暁には、一から彼らを書いてみたいものです。
【マグノリア】1


「……また、やったのか」

 拭き晒しの風が、感情の篭もらない声を打ち消していく。厚さ十センチのコンクリート壁が、乾いた音を立てて崩れた。三月の初めにしては珍しい、澄み渡った青空が覗く。そして、三階建ての小さな廃ビルの中を砂塵と冷気が吹き抜けていく。

「随分と『引き摺られている』な。苦しいだろ?」
「……血が」

 語りかけた先のうずくまった影が、のそりと動いた。
 返事はするものの、震えが治まる様子はない。

「身体中が騒ぐんだ。『欲しい』って、『血が足らない』って」
「越野」
「とまらないんだよ。今だってまだ、」
「越野!」

 制止するように一喝する。
 止まらない衝動。
 揺るがない──欲望。
 恫喝した少年が一歩前へ歩み寄る。床に散らばるコンクリート片を蹴散らしながら、しゃがみ込んだまま動こうとしない相手にそっと手を差し伸べる。母親が子供にするような、優しい動作。

「帰るぞ」
「梶」
「お前は何も考えるな。いいか、『そのまま』でいろよ。『変わる』んじゃねぇぞ」

 差し出される指先は何を想う?

「お前は『人間』だ。忘れるな。俺とお前の……『約束』だ」

 カランと、床に欠片が落ちる。背後で風が鳴る。
 ……この、『血』を求めるだけの、一切の『保証』の無いカラダに唯一確かなものは。
 たったひとつの『約束』。
 『人間』で在る事を。

「……解ってる」

 天に向かい枝を伸ばした名前も知らない乳白色の花が、青い空の向こう側で寒風に煽られて花ごと地に落ちる。
 血溜まりの、中へ。


     ☆


 ──その日の夕刊に、市のはずれにある今は使われていない小さなビルに突如大きな穴が開き、身元不明の四人の青年の『死体』が発見された、という内容の記事が小さく載った。


     ☆


「梶……奏一郎クン?」
 人もまばらな昼休みの教室。することもなく窓際の自分の席から校庭を見下ろしていた梶に、掛ける声があった。

「こらまたえらく小難しいカオしてるんだな。趣味?」

 無遠慮に覗き込まれる。

「何の用だよ転校生」
百人神輿
5日・6日の二日間、地元のお祭りでした。
私は屋台囃子保存会の会員でもあるので、二週間ほどの練習を含めてこのお祭りに参加しました。
今年は「百人神輿」といって、いせさきまつり50周年を記念して今まで展示するだけで実際に担ぎ手のいなかった1トンもある巨大な神輿を引っ張り出して、方々から人手を募集してお披露目しようという企画がありました。
写真はその神輿です。
少しでもいせさきの伝統が後世に残っていくようにと、願わずにはいられないです。


屋台囃子を始めて約16年になります。
地元町内の子ども達が「子ども会」として、小学校低学年の頃から屋台囃子に参加します。ほとんど中学に入る頃には止めてしまうのですが、私だけはこの歳まで続け、気が付いたら保存会の会員にまでなってしまいました。
しかし、年々参加する子供の数も減り、また保存会の会員も増えず、あやうくすれば私の代で保存会は終わってしまうんじゃないかと言われています。
出来れば私が生き続ける限り、或いはいなくなっても屋台囃子は残っていってもらいたいものです。
その為にはどうしたらいいのか、毎年考えては一夜の祭りの如く消えていってしまうのです。


この世で唯一文章で表現出来ないものといったら、やはり「音」だと思います。
囃子を口伝で残すことは出来ます。実際に、囃子に楽譜なんてものは存在しません。あるとすればそれはあくまで音のイメージを文字に置き換えただけのものです。曲などあってないようなものですし、何十年と経てば徐々に変化していってしまいます。地区ごとで音が変わるのは当たり前です。オリジナルなんてものは何百年も経ってしまえば、もう存在しないのも同然ですから。
しかし、音はそうはいきません。楽器と演奏者がいなければ音楽にはなりません。CDに焼いたからといって、その場の空気まで残せるわけではないのです。
もしも自分の囃子を小説で表現しろと言われたら困ってしまいます。
伝統というものは、肌で伝えていくことだと考えます。
だからこそ、先輩方から教わってきた我が町内の屋台囃子を、途切れることなく何百年と先まで伝えていきたい。そう思います。


今年のお祭りはおしまいです。
祭りの後の淋しさは、祭りを楽しんだ後でないと味わえないものです。
今年は雨も降らず、最高のお祭り日和でした。
バス待ち

 月曜の昼下がり。史香は午後の授業を抜け出して一人、バス停の前で立ち尽くしていた。三十分に一度しか来ないバスを待ち、イライラと携帯の時計を何度も確認する。
 炎天下。蝉の、命を絞るようなけたたましい鳴き声が木霊している。時刻表を見ると、つい五分前にバスは通り過ぎてしまったようだった。タイミング。運が悪いと、溜息混じりに携帯を鞄に収めた。
 空色のベンチに座り、史香は両脚を投げ出して気の抜けたように天を仰ぐ。こんな時にスカートの丈なんか気にしない。

「あーあ……」

 最近ついてないな。ぼんやりと、そう思う。
 授業をサボる事は珍しくない。前は友達と一緒にサボってカラオケに入り浸っていたりもした。だけど、三年生にもなるとそんな相手はいなくなる。皆揃って模試だ補習だと忙しい。
 史香も、建前は大学を受験するつもりでいる。けれど、最近では迷い始めている。というより、どうでもよくなってしまったというのが本音だ。
 大学への目標もないし。
 ただ、名目や形だけで。

「暑いなぁ……」

 史香は、鞄からつい自販機で買ったばかりのペットボトルのお茶を取り出して一口飲む。夏はまだ来ない。けれど不快指数は急上昇中だ。せめて夏休みが始まるまでには梅雨は明けて欲しい。
 じっとしていると、アスファルトの照り返しでじわじわと背中まで汗が滲み出てくる。これなら授業を受けていた方がマシだったかもしれない。史香はうな垂れる。
 どうせ、勉強なんて手につかないのに。
 駅に着いたら近くのマックに入ってバニラシェイクを飲むんだ。デパートでもいい。ガンガンに冷房の効いた店から店へ渡り歩いて。そうやって夕方まで時間を潰そう。史香は頭を抱えたまま考える。
 夏なんて大嫌い。
 いい思い出なんかない。

「もしかして、史香?」

 不意に声を掛けられ、ハッと顔を上げる。横を見ると、一人の少年が珍しいモノを見る目でこちらを覗き込んでいた。

「え、なんで淳平?」

 彼は高校一年の時の同級生の淳平だった。真っ黒に日焼けした顔は何処か妙に大人びていて、一瞬誰だか解らなかった。サッカー部の部長でもある彼はもう推薦が内定していて、しばらく学校でも見かけなかったはずだが。

「なに、具合でも悪いのか」
「ちがう、暑くてだるいだけ。今日、ガッコ?」
「ん。でも午後補習で、いても仕方ないから帰る」

 隣いい? 断って淳平は、史香と並んでベンチに座る。
 なんだか気まずくて、史香は端に避けながらそっぽを向く。一気に周りの温度が三度ほど上がった気がする。

「……なんか、俺ら話すの久しぶり?」
「そうだね」
「お前、今でもサボって遊んでるの? こんなトコいるし」
「人聞き悪いな。ベンキョもしてますー」

 さして興味の無さそうに淳平は、相槌を打つだけで済ます。かつてはサッカー部の一部員とマネージャーの間柄だった。そして、形だけは付き合っている事になっていた。
 告白も無ければ別れの言葉も無かった。
 だから史香がサッカー部を辞めた時、二人の関係は自然に切れていた。
 今こうして思い返しても、アレが恋愛だったのか解らない。

「お前さ、いま付き合ってる奴……いるの」

 同じことを思ったのか、淳平が切り出す。やめて。史香は心臓の奥が重く音を立てた事に気付く。
 やめて、聞かないで。……認めたくない。この現状を。

「……失恋した、ばっかり」

 笑い飛ばそうとして上手くいかず、半分だけ泣きそうな顔で呟く。心とは裏腹に。
 淳平は、悪い、とだけ返す。史香には彼の表情が見えなかった。

「あ、やだ暗くならないで。結構吹っ切れてる、ていうか、諦めてるっていうか……いや、だから悪くないし。ていうか私なに云ってるんだろうねははは」
「うん」
「いや、なんていうか……割と本気っていうか、そうだったんだけど……あ、でもダメで。なんか……ねぇ、何いってるんだろ」

 一度口にしたら止まらなくなって。史香は努めて明るく振舞う。本気だったんだけど。でも。
 駄目になって。

「なんか、変なこと聞いたな俺。ちょっと、気になってたから」
「そういう淳平は? モテるし、一人や二人いるんでしょ」
「一人で充分だろ馬鹿。でも、俺も駄目だな。サッカーしか考えられないから」

 そうなんだ。妙に納得して、史香はうなづく。部活ばかりに集中し過ぎていつも相手にしてもらえなかった二年前を思い出す。

「今でも思うけど、私酷かったよね。他の先輩とかとも遊んでたし。知ってたよね」
「知ってる。でもアレは、俺も悪いし」
「私、構ってもらえないの、嫌みたいなんだよね。マネージャーとか、皆にちやほやされるって思って入ったところもあるし」

 全部、計算して。史香は誰にも今まで云わなかった事を吐き出す。淳平は何も反応せず、ただ額の汗を拭った。

「付き合ってたの、5組の田村くん解る? 彼でさ」
「うん」
「受験だから、『勉強に集中したい』とか云ってさ。私別れるの嫌で嫌で何度もメールしたり電話したりしたけど、駄目だった。しつこいの逆効果でさ」
「うん」
「結構本気で好きだったのに、駄目で。大学行っても一緒だと思ってたらそうじゃなくて。駄目で。だから……なんか駄目で」

 駄目になったとしか口から出てこない。史香は音の飛んだCDのように同じ台詞を繰り返す。次第に涙が溢れてくる。
 カッコ悪い。
 なんでこんな場所で泣いてるんだろう。男の隣で。バス待ちの間で。汗でメイクもぐちゃぐちゃな所に輪を掛けてみっともない姿になって。
 淳平は慰めもせず、ただ相槌を打っている。不器用なところも変わっていない。それは彼なりの優しさなのだと、目元を擦りながら史香は思う。

「俺さ」

 それまで黙って泣かせていただけの彼が、ふと口を開く。 

「お前と付き合ってる時、『付き合ってる』って実感無かった。好きとか無かったし、ただ何となくつるんでただけじゃん?」
「そうだね」
「先輩とも遊んでるの聞いてたし。だから、女なんてそんなもんだって思ってて」
「それは、なんか……ごめんなさい」
「でも、俺なりに本気だった時もあって」

 手の甲で汗を拭きながら、そこで言葉を切る。続きがあるものと思っていた史香はそこで、もう一度彼の云った事を反芻する。

「本気、だった?」
「あんまり、構ってやれなくて悪かったな」

 こちらを見ないで、淳平は頭を下げる。汗が顎を伝って地面に落ちる。
 史香は、何も云えないでただ、首を横に振る。
 あの頃の気持ちが蘇る。淳平に構ってもらえなくてつまらなくて、先輩や同級生や他校の子にまで見境無く手を出して、やきもち妬いてくれるんじゃないかって期待しながら彼を裏切っていた毎日。
 サッカー部を辞めたのも、引き止めてもらえるんじゃないかと計算して。
 だけど、計算だけでは上手く恋は回らない。
 そして今日も、ひとりぼっち。

「……わたしばかだぁ」

 心の底から吐き出して、肩を落とす。
 そのまま云えばよかったのに。構って欲しいと、伝えれば済む話だったのに。
 本気で好きでいてくれる人がいたのに。

「ばかだなぁ」

 失って気付くものもある。本気だったと涙する恋も、計算して思い描く恋も。
 振り返れば手の届く場所にあったのに。

「でもちょっと嬉しい。そういうの、淳平から一度も云われたことなかったから」
「まぁ、なんとなくだし」
「そうだねぇ」

 なんとなく付き合ってなんとなく別れて。数ある人生の中でよくある出来事。

「でも今日、淳平に会えて良かった……かも」

 きっとバスではなく、彼に会う為に待っていたんだ。
 このバス停で。
 誰かを本気で好きだと思ったこと、そして誰かに本気で好きになってもらえたことを確認する為に。

「あー、もう泣くのやめよ。ハイ、終わり。もういいやめやめ」

 ぐしゅぐしゅになった鼻をすすり上げて、無理矢理でなく笑ってみせた。つられて淳平も微笑む。そのはにかんだ感じは昔と変わっていなくて、史香は嬉しくなる。
 すると淳平の背後から排気音を立てて一台のバスが走ってきた。あ、と史香が顔を上げる。二人の前でバスは停まる。立ち上がって、二人は顔を見合わせた。どちらともなく乗り込んで、一番後ろの席に座る。
 停留所を後にして、バスはゆっくりと走り出す。
 そういえば、淳平が何処の大学に入るのか史香は詳しく知らなかった。そんなことを尋ねながら、もし大学を受けるなら志望を同じにしてみようかと、史香は頭の隅でちらりと思った。だったら学校をサボるんじゃなかったと後で思いつきながらも、今日というこの日に感謝しながら。
http://www.honjitsu-no-koudou.com/koudou.php
楽しい今日の行動占い。




くらのかける さんのテキトーな本日の行動です!



12:00頃

バイトに行く。5歳年上だが、後輩口調で腰の低い同僚をアゴで使う。今日は店長に誉められて機嫌がいいので、休憩中にマイルドセブンも買いに行かせる。



14:00頃

スイッチひとつで髪が逆立つ新感覚ウィッグ、「怒髪天」がいよいよ完成。1人でウィッグを被って、鏡の前で延々と動作テストを行っているうちになんだか切ない気持ちになる。



16:00頃

整形外科へお手伝い。豊胸手術を依頼されるが、やり方がわからないためとりあえずイースト菌で発酵させることに。ワンサイズアップに成功。



18:00頃

特に深い意味はないが、自分の名前を商標登録してみる。ほんのささやかな権利収入を得る。



20:00頃

ペットのチワワと戯れる。「愛のプロレス劇場」と称して戯れているうちに感情がエスカレートしてしまい、手が滑ってバックドロップが炸裂。チワワ脱臼。



22:00頃

風呂に入る。風呂上りと同時に大きい方の便意をもよおし、トイレへ。何だかもったいない気持ちになる。



24:00頃

意味もなく、じいちゃんの老眼鏡をポテトチップスを食べた後の指でペタペタする。老眼鏡が指紋だらけに。





くらのかける さんの、本日のラッキー俳句!

ハナクソで 組み立てできる 萌えフィギュア



この言葉を、つらいとき、悲しいときに口ずさんでごらん…!

するとアラ不思議、心はもう雲ひとつない日本晴れ!頑張れ、ニッポンのダメ人間!





……本当は一日寝てました。ごめん、更に輪にかけたダメ人間で。
「北の風、晴れ。夕方から、くもり。所により、夕方から、宵のうち、雨。12時から18時までの降水確率20パーセント。 18時から0時までの降水確率20パーセント」
 それは最終下校時刻の五時を回り、部活も無事に終えて昇降口からスニーカーに履き替えいざ外に向かおうとした時だった。敦士がふと通り過ぎた女子の下駄箱の端で、仁王立ちしながら親の敵のように空を睨めつけている一人の女生徒がいた。
 まるでアナウンサーのようなその台詞に思わず立ち止まる。

「って、桂木。なんでまだガッコおるの? つーか何一人でしゃべってんの」
「おう、八嶋」

 実に男らしく答えた桂木美咲は、145センチの身長でもって精一杯片手を上げて敦士にアピールする。小柄でぴょんぴょん跳ね回る元気のいい彼女だが、同じクラスでもあまり話したことがない。180センチ近い身長の敦士から見ると同じ高校生とは思えない美咲を、何処か敬遠していたふしがあった。

「八嶋って家、どっち方面?」
「なに、急に」
「いや、雨、外。降ってるの」

 腕組みして難しい顔のまま美咲が答える。

「あー、降るっていってた」
「違う。午後は20パーセントなのだ。高気圧に覆われて概ね晴れる所が多いのだ」

 指を指されつられてガラス戸を見るとぽつぽつと水滴が落ちていた。とはいえ降り始めなのだろうか、あくまで小雨だ。

「降水確率は20パーセントなのに、今現在雨が降ってたら100パーセントなのだ」
「いや、別に濡れていけばいいんじゃね? お前市内だろ。家近いじゃん」
「やだ。20パーセントなのに濡れて帰るのは許せない」

 ふるふると拳を振るわせる。案外変わったやつなんだなぁ。敦士はぼんやりと別のことを考える。
 敦士はこれまで天気に一度でも興味を持ったことなどなかった。
 そこにあるのが普通だから、雨だろうが真夏日だろうが関係ない。

「じゃ、いつもはどうやって帰ってるんだよ。夕立ちとかさ」
「いつもは傘持ってるもん。今日はないの! ゆるせない……!」
「許すも許さねぇも、自然だしな」

 昼間ひとしきり照っていた太陽は雲に塗れて隠されてしまった。晴れのち曇り、そして雨。夏も近いこの季節は前線の影響で雨も多い。気圧が上がれば気温は上がるがその分雷を伴う雲が多くなる。突然の雨。当たらない天気予報。開けない梅雨。敦士は苦笑する。

「んじゃ、このままここで雨上がるの待ってれば? 俺、帰るし」
「あ、やだ、ねーねー八嶋く~ん」
「なに、いきなりくん付け。きも」
「ばか。……んね、傘、持ってない?」

 子猫が餌をねだるように、甘えた瞳で訴える。目線が下からな分、何やら照明の反射で「おめめキラキラ度」が高い気がする。

「……自己満足の為にひとの傘借りるかぁ?」
「じこまん! ひど! 途中まで一緒に帰ろうってお話だったのに!」
「お前と並んで歩いたら逆に濡れちまうだろ。おまえ背、低いし」
「でも風除けになるし」

 あ、やべ、という顔で彼女は舌を出す。
 敦士はやれやれという風に肩から溜息を吐き出す。

「じゃ、一つだけ答えたらな」
「えっ、傘ホントに持ってるの?」
「いいから。……明日の天気は?」

 彼女の問いには答えず、敦士は指を一本立ててそう促した。
 もしも犬だったら耳がピンと立ち尻尾が振られていただろう。子犬のように美咲は右手を上げてぴょこんと飛び上がった。

「南の風、後、北の風、晴れ。夕方から、くもり。所により、夕方から宵のうち雨で、雷を伴う。0時から6時までの降水確率0パーセント。 6時から12時までの降水確率0パーセント。12時から18時までの降水確率30パーセント。18時から24時までの降水確率30パーセント!」

 暗記のようにすらすら答えて、得意げに身を乗り出す。敦士はただ感嘆するしかなかった。

「なんでそんなに詳しいの。気象おたく?」
「だって、世の中なんでも頑張れば思い通りになるけど、天気と人の心だけはそうはいかないもん」

 移り変わりの激しい毎日だから。彼女はそういいたげに窓の外に目を向けた。話し込んでいるうちに空の色は深みを増して汚く濁り始めた。
 拍手のような、雨音。
 敦士は、黙って鞄の中をあさった。教科書も筆記具すらも教室に置きっぱなしで何も入っていないはずのその中から、魔法のように一本の折りたたみ傘を取り出してみせた。途端に美咲の表情がぱっと明るくなる。雲の隙間から差し込む天使の梯子のようだ。

「明日の方が降水確率は高いんだよな」
「30パーセントだから、三割の確率なのだ」
「それ、云い方変えただけで意味一緒だから。じゃ、明日は傘持って来いよ」

 云いながら敦士は傘を渡す。神さま仏さま八嶋さま、と拝むように傘を受け取る。
 敦士はそのまま玄関口を出るつもりで歩き出す。元々傘は差さない主義だ。今日はそれなりに楽しい思いもした。このまま濡れて帰っても文句は云わない。

「だぁめ!」

 走り出そうとしたまさに足を踏み出した瞬間、駄々っ子のように彼女が走り寄って叫んだ。隣に並んで雨の中に突っ立って、敦士の横でなかなか開かない傘に苦労しながら手を伸ばす。

「一緒に帰ろ。傘、持つから」
「……結局濡れてるじゃん」
「いいもん。並んだら濡れるし」

 風除けじゃないのか? そう意地悪く思いながらも彼女が開いた旧式の黒い傘に収まって、水溜まりを飛び越しながらゆっくりと歩調を合わせて歩き出す。せめて車の撥ねる水飛沫だけは受け止めてやろうかと、さりげなく道路側に移動してやる。彼女の予報どおりなら、明日の今頃は30パーセントの確率で雨になる。少しは気象庁のいうことも信じてやろうか。移ろいやすい、この季節の中で。
以前から見に行きたがっていた「日本沈没」を見に行ってきました。
ネタバレはしませんよもちろん。
地元に近い市の商店街がロケ地に使われていて、そればかり気にしていました(笑
一応、それらしき場所は出てましたけどね…ロケ見たかったぞ、と。


人を感動させる作品、というのは実に時間とお金が掛かるものなんだなぁ、としみじみ思いました。
ネットのすみっこでちまちま文章を綴っていても、シナリオ、俳優さんの演技、演出、アクション、特殊効果、音楽…そういったものには到底敵わない訳でして。
人の心を動かすというのは、本当に大変です。


でも、意外な一言で恋に落ちてしまう時もあるように、それほど難しい事ではないのかもしれない。
出来れば常に、誰かの心を引っ張って動かして転がしてみたいものです(笑


一度だけ、それはもう大勢の、数え切れないほどの人の心を動かしたことがあります。
それは私の我が侭でした。
もしかしたら幻想かもしれない。ほんの数人かもしれない。
だけど、その事で誰かが行動し、結果的に大変迷惑を被った人がいるのは確かです。


……彼にはもう会えないかもしれないけど、まだ私は生きてこうやってネットで文章を綴っています。
いつの日か、きちんと心から謝れるように。
その時はまた、彼の心を動かせるように。
私の願いはそれだけです。
守りたい人は、生涯ただ一人だけです。
今でも大切な、友達です。

 その日は十月の半ばにも関わらず日差しが一段と強く、どこまでも抜けるような青い空が広がっていた。貴明は気が付くと何度も天高く見渡して、その度に近くにいる誰かのチームへの応援で目を覚ます。
 蒼空の下では万国旗がはためき、生徒達が一丸となって声援を送り合い、競い合い、互いを励まし合っている。体育祭。年に一度、火のついたように学校中が勝負事に色めき立つ日でもあった。
 文化祭と違い、父兄も揃って見学に来る。自然と盛り上がり、熱を上げたまま午後のプログラムも順調に消化していた。
 だが貴明は浮かない顔のまま、空を仰ぎ見ては溜息をつく。いっそ雨でも降ればいいのに。このまま、最後まで終わらせないで。

「こら、佐崎くん! なにボーっとしてるのよ! 最後までちゃんと応援しなさいよっ!」
「うわっ、何すんだよ!」

 がん、っと吹っ飛ばす勢いで貴明の背中を拳で殴りつけ、学級委員長の未波が声援と同じトーンのまま叫ぶ。今は三年女子による1000メートル走が行われていた。トラックの上に転がり出そうになって、貴明は何とか踏み止まる。
 ポニーテールのリボン代わりに、チームカラーのオレンジ色のハチマキが揺れている。気にせず彼女はばしばしと貴明の肩を叩き続ける。

「ホラ、あと少しで逆転なんだから」
「うるさいな。どうせ勝てやしないって。二位と30点も点差あるじゃねーか、無理だ無理」

 ジャージの裾を引っ張って未波は催促する。だが貴明は軽くあしらって、パイプ椅子にしがみつくように背を向ける。
 チームは各学年クラス毎に七つに別れ、それぞれ一年から三年まで縦割りされる。貴明は二組だった。そして、現在までの総合得点で三位だった。
 残るプログラムはあと二つしかない。

「ちょっとーっ! 一人でも投げやりになってたら士気が下がるでしょうがっ!」
「士気なんて下がりまくりだろうが! 無理だ絶対無理むりむりむり」
「何云ってんのよ、最後のリレー! 最後、50点も取れる大チャンスがあるでしょう!」

 右手を開いて突き出して、未波は主張する。貴明はげんなりとそれを流し見た。
 貴明が憂鬱な理由。それが最後のチーム対抗男女混合リレーだった。

「……なぁ委員長。俺がそのリレーの大事な大事なアンカーなのは当然断然ご存知でございますよね?」
「当然断然ご存知でございますが、何か問題でもごさいましたでしょうか?」
「では、なんで俺がアンカーに決まったか、当然断然ご存知でございますでございますよね?」
「夏に測定した100メートル走の記録が良かったからでございますでございますが、それが何か?」

 貴明はがっくりとうな垂れる。

「白状するわ。その記録、俺がこっそり書き直したんだ」
「…………はぁ?」
「見栄張る為にさ。せんせーが目を離した隙に。まさかこんな事になるとは思わなかった」

 今日まで誰にも云わず、胃痛と頭痛のタネとして胸にしまっておいた事実。それまでノリの良かった未波もすっかり固まってしまった。現実のどこか遠いところで、ピストル音が鳴り響いた。貴明は頭を抱える。
 硝煙が、空を汚す。
 後を追うかのような、皆の掛け声。
 別に、書き直す前の記録だって悪くはなかった。ただ、目の前に記録用紙があり、誰も近くにいなかった。それだけだ。
 ただその偽の記録が、三年の、高校生活最後の体育祭で注目されてしまっただけだ。そう、実にシンプルな「因果応報」の図式だ。
 貴明は、未波から何の反応もなくなったと顔を上げた。馬鹿にするなり怒るなり吊るし上げるなり好きにすればいい。覚悟の上だ。

「……委員長?」

 しかし、般若の如く彼女を想像していた貴明の予想を裏切り、未波は腰に手を当て微笑んでみせた。

「だから何? 何が問題あるの」
「……」

 いやだって、記録が。云い繕うとして貴明は出来なかった。

「今がんばることに何も変わりないでしょうが。みんなが頑張ってるのに、何もしない訳?」

 語尾に少し嘲笑を含んだ彼女の台詞。貴明は目を瞬かせて真正面から見返した。オレンジのハチマキが青空に映える。

「勝つのはもちろん嬉しいけど、佐崎くんが一生懸命走ることが大切でしょ。すごい大きな期待が掛かってるんだから」
「それ云われたら余計にプレッシャー」
「でも、一生懸命やったら、みんな責めないで応援してくれるでしょ。勝っても負けても、結果オーライ」

 小さくガッツポーズを見せて、未波は軽やかに笑う。
 貴明は泣きそうに、しかし男だからという小さなプライドで感情の波を乗り切った。責任感の強い彼女なら、嘘をついた事を知ったら真っ先に怒鳴ると思っていたのに。
 貴明は思い切り天を仰ぎ、伸びをしてみせた。涙を誤魔化すように。何かを吹っ切るように。
 ずっと雨が降るように、体育祭が中止になればいいとまるで小学生のように、何かにすがり祈っていた。休むことも考えたが皆からの糾弾が怖くて何も出来なかった。だけど。
 『がんばること』は出来る。
 前を向いて走ることは出来る。
 この青空の下で。

「よし、お守り」

 未波は自身のセミロングの髪を纏めていたハチマキを解いて、頭を二度振る。すっかり癖のついた髪の毛はしかし、彼女の動作に揺れて肩に落ちる。
 そのハチマキを握り貴明に差し出す。

「さっき三年女子の総合リレーで一位とった貴重なブツでっせダンナ。これ巻いてけ」

 云いながら押し付ける。貴明は驚きながらもしっかりと受け取る。

「……おう」

 代わりに自分のハチマキを彼女に渡し、受け取ったそれを額に巻きつける。固く結ぶと貴明は、もう一度祈るように空を見上げた。願うのは雨天ではない。
 この青空を。
 どこまでも続く世界を。
 勝利を。

「わかんねぇけど、行ってみるわ」
「おう、ガンガン行っとけ。ついでに勝っとけ」

 自信はない。だけど心は晴れた。
 もう、大丈夫。
 彼女のハチマキが、まるで加速装置のようにもの凄い力で貴明を動かすから。叩かれた背中がじんと痛んでいる。後押しするように。
 つよく。
 集合のアナウンスと共に貴明は、頬を叩いて気合いを入れる。まずは走ろう。思いきり。偽りで塗り変えた記録ではなく。貴明は入場門に向かう。
 負けても彼女なら笑って許してくれるだろう。いや、もしかしたら誰よりも怒るかもしれない。そんな事を思いながら、固く結んだハチマキをもう一度撫でて彼女を振り返った。風もないのに、遠くで残されたオレンジ色が小さく揺らいだ気がした。
関東地方ではようやく「梅雨明け宣言」が出されたようです。
最近の長雨は、梅雨だか台風の影響だか夕立ちだか区別がないような気がします。
まぁ、部屋に引きこもってPC弄ってる私には関係ない話だorz


薬で無理矢理寝るのが習慣になっているので、いっそどこまで起きていられるのか試しました。
ブログのデザイン弄ったり新しい小説を書いている内に、およそ30時間ぐらいでやる事がなくなってしまいました。
結局、薬を飲んで寝ました。その後約14時間ほど。なんだかいつもより頭がすっきりしていますwwww


さて、修行修行。

 ……実のところ、午後になって電話でいきなり誘われた時は嬉しいよりまず「人の多いところに行くのめんどくさいな」って思ってしまった。夕立の心配もあるし、帰りの電車も考えなければならない。補習と塾以外は家から出ない生活をしていたせいか、市外に出るだけで億劫になってしまう。

「おまえ、浴衣持ってないの?」
「小学生の時のでいいならあるよ」
「つまんねーな。あれ流行ってんじゃん、ミニ浴衣。パンツ見えそうなヤツ」

 知らないよそんなの。健全な受験生は一切興味ありません。
 いっこ下の亮はまだ気楽に遊んでいられる。夏だし。羨ましい。
 愚痴るのも何だかかっこ悪くて、夏休みに入ってから一度も連絡していなかった。だって、彼氏でもなんでもない、ただの幼なじみだし。
 だから、本当は会いたくなかった。

「たまには息抜きしーや。迎え行くから」
「や。駅前で待ち合わせでいーよ」
「んじゃ行くのな。決定。早めに行って屋台でイカ焼きな。あーっと、焼きそばもつけてな」

 気が付いたら、そんな流れになっていた。
 それでよく考えたら、二人きりで何処かに行くなんて小学校以来かもしれないと思い出した。
 更によくよく考えたら、男と夜に出掛けるなんて初めてかもしれない事に気付いてしまった。
 たかが花火大会なのに。
 出掛ける一時間前になってから着ていく服とかアクセとか選んでるの。馬鹿。私の間抜け。
 マニキュアが乾かなくて、皺が入って指先が汚くなってしまった。マジ泣き入る前にとにかく駅に行かなくちゃって、それだけ考えて。結局普段着で、いつもより断然人の多い駅の構内を走っていった。
 十五分遅く行ったら案の定馬鹿にされた。

「だめ。ブーッ。たこ焼き追加」
「ちょ、それ、私が奢るの!?」
「あたりまえだーっての」
「サイアク」

 電車はまだ夕方なのにもの凄く混んでいて、いつもなら余裕で座れるのに二人してドアのとこへばりついて昨日の深夜ドラマの話をしていた。勉強がんばってる? うん、それなりに。指先を隠しながら私は亮の話に適当に相槌打って誤魔化していた。
 ……本当は、凄く会いたかったんだよ。
 でも、云えなかった。
 みっともない爪と一緒で、本音隠したまま。
 駅から会場までバスに乗って、来週映画見に行くんだって話を聞いていた。アンパンマン。何それ。
 停留所からてくてく歩いて。まだ着かないの? そのうち人の流れがたくさんになってきた。みんな花火見に行くんだ。夏の思い出に。
 亮は一人でずっとしゃべってた。メールしなかった分を補うように。
 私は、歩くのに夢中で話の半分も聞いていられなかった。足速いし。人多くなってきたし。
 私も話がしたかった。
 本当は全然勉強なんかしてなくて。卒業するのだって嫌で、あと半年で亮と離れるの考えたくないとか、子供じみた我が侭、全部ぶちまけたかった。映画だって見に行きたい。ずっと一緒に歩きたい。花火だってずっと見ていたい。
 でも、言葉にならなかった。

「お好み焼きは遠いなマジで。そろそろ花火上がる時間じゃん!」
「屋台無理だよ。花火だけ見て帰ろ」
「花火だけじゃ意味ないし」
「目的違うじゃん!」

 打ち上げ場所の近くは場所取りしてる家族連れでごったえがえしていた。すでに酔っ払いが掛け声上げて、耳障りな笑い振りまいていた。それでも亮の足は止まらなかった。七時きっかりに一発。でっかい光の花が咲いて、ドンって地響きみたいな音がした。
 私が驚いて立ち止まったのを見て、亮がようやくこちらを振り返った。
 そして隣に並んで、同じように花火が打ち上げられる様子を眺めた。一発、二発。次は連続で。赤、緑、紫、金。
 上がっては散っていく。夜空に残るのは、煙と残響のみ。

「……別に屋台でメシ喰う為に来たんじゃないから」
「花火でしょ」
「おまえだよ」

 それまでのふざけた態度とうって変わって、優しい目で。
 それまで指先見せないようにバッグを握り締めていた手を、何も云わずに解いて、重ねてくれた。
 私のみっともない部分を全部隠してくれるように。
 つよく。
 人込みのど真ん中二人で立ち尽くして。
 おそるおそる握り返したら、もっと力込めて握ってくれた。
 大会のスポンサーの紹介アナウンスが流れて、辺りは見物客の喧騒と野次だけになった。取り残されて、慌てて亮に引っ張られるようにして早足でその場を後にする。

「……ちゃんと聞こえたよな」
「なに、なんか云った?」
「うっせ、串焼き追加」
「お腹すいたねぇ」

 来て、良かった。
 亮に会えて良かった。
 花火、見れて良かった。
 何も云わなくて、良かった。




 土手に並ぶ夜店を発見して一目散に飛びつく亮を見て少し後悔しかけたけど、背後では変わらずに音を立てて花火が宙に花を咲かせているのを知っていたから、爆音に紛れて一言、「好き」と呟いてみせた。……さっきの彼と同じように、誰にも知られないように。
 だけどいつまでも残っていく。夜空に木霊して。
 一瞬で咲いて散っていく、あの大輪の花火のように。
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